半藤一利と加藤陽子の対談集・「昭和史裁判」の第二章・近衛文麿を読んでいて、しきりに思い出されたのが、西木正明著「夢顔さんによろしく」だ。夢顔さんとは近衛文麿の長男・文隆のことである。
この本は、終戦時にA級戦犯に指定され服毒自殺した近衛文麿首相の長男・近衛文隆〔細川護熙の叔父にあたる〕を追ったドキュメンタリーだ。
満州で終戦を陸軍士官として迎え捕虜となり、シベリア抑留。各地の収容所を転々としたあと、ハバロフスク裁判で国際ブルジョアジー幇助という罪で26年の禁固刑を受ける。昭和30年の日ソ国交正常化交渉に際し、鳩山一郎首相の帰国要求や国内からの数十万人もの署名入りの嘆願書があったが、帰国が叶うことはなく、死去。彼の死は病死にしては不審な点が多く、西木は毒殺の可能性を強く示唆している。
平成3年、「政治弾圧犠牲者の名誉回復に関する」ソ連法で無罪、名誉回復。平成4年、ロシア連邦軍最高検察は、近衞文隆の名誉回復を採択、平成9年、ロシア軍最高検察から名誉回復証明書を出した。
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