目が覚めたら外はしとしと雨でなんとなく体がだるい。机の上には缶ビール・ワインの残りが並んでいる。ウーン、昨晩は6人集まってのまきぽん親睦会だったのだ。 ひさしぶりのアルコールだったのでみんなハイになり、会話がいろいろはずんだ。 テーマのひとつは、関西の奥座敷と呼ばれている芦原温泉がどうあるべきかだった。 「関西のひとは根っからの商売人や。顧客の宿泊にはやっぱり芦原温泉を使ってもらう。わたしら紹介するのは、マ、二流どころの旅館なんやけど、宴会が済んだあとで一夜の女性を世話しろという客もいる。そしてやね、値段の交渉でもっと安うならんかと言うそうなんや」と会社を経営するTくんが言っていた。
愛に金銭がつきまとってはならないを信条とするぼくにはよくわからない話だが、昭和33年に施行された売防法もザル法と呼ばれるほどに、男はおしなべてスケベなのかもしれない。
しかし、芦原温泉の謳い文句は湯煙の里なのだ。 数年前、上州草津温泉に泊まったことがある。夜、食事を終えたぼくたちは、浴衣下駄履きで外を歩いた。街の中央に湯畑と呼ばれる白い煙のあがる熱い湯の池があった。照明設備がその池をライトアップしていた。沢山の浴衣姿が周りを散策しあるいは池をじっと眺めていた。 温泉に一番必要なものは詩情のある風景だと思う。
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