今朝の来訪者が「啄木はいいなあ」と言いながら帰って行ったが、ぼくも心が寂しくなると、啄木の詩が頭をよぎります。
呼吸すれば 胸の中にて 鳴る音あり
木枯しよりも さびしきその音
不来方の お城の草に 寝転びて
空に吸われし 十五の心
己が名を 仄かによびて 涙せし 14の春に かへるすべなし
友がみな われよりえらく 見ゆる日よ 花を買い来て 妻としたしむ 「一握の砂」
東海の 小島の磯の 白砂に われ泣きぬれて
蟹とたはむる
いたく錆びし ピストル出でぬ 砂山の 砂を指もて 掘りてありしに
たはむれに 母を背負ひて そのあまり
軽きに泣きて 三歩あゆまず
高きより 飛びおりるごとき 心もて この一生を 終るすべなきか
非凡なる 人のごとくに ふるまへる 後のさびしさは 何にかたぐへむ
それもよし これもよしとてある人の その気がるさを 欲しくなりたり
人といふ 人のこころに 一人づつ囚人がゐて うめくかなしさ
わが抱く 思想はすべて 金なきに
因するごとし 秋の風吹く
かにかくに 渋民村は恋しかり おもひでの山 おもひでの川
石をもて 追はるるごとく ふるさとを
出でしかなしみ 消ゆる時なし
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